相場の振り返り
株式市場
日経平均株価 終値:48,088.80円(前週末比 +2,319.30円 +5.07%)
TOPIX 終値:3,197.59(前週末比 +68.42 +2.19%)
日本10年国債利回り 終値:1.690%(前週末比 +0.029ポイント=+2.9bp)
S&P 500:6,552.51(前週比 −163.28 −2.40 %)
NYダウ 終値:45,479.60(前週比 −1,278.68 −2.70 %)
ナスダック総合 終値:22,204.43(前週比 −576.08 −2.50 %)
日本株(2025年10月10日週)
日本株は「高市ショック」とも言える上昇。自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出されたことで、「金融緩和継続と積極財政」への期待が一気に広がりました。日経平均は前週比+2,319円の48,088円と急伸、TOPIXも+2.2%高。円安進行や政策期待を背景に、半導体、防衛、インフラ関連など成長テーマ株が軒並み上昇しました。
ただし週末の時間外取引では、公明党が自民党との連立を解消したとの報道を受け、日経先物が急落しました。与党の議席基盤が不安定化することで、補正予算の成立や積極財政政策の実行に遅れが生じるとの懸念が広がったためです。市場は「政策実現力の低下=景気刺激効果の後退」と受け止め、短期的な調整圧力が強まりました。
米国株(2025年10月10日週)
米国株はトランプ大統領の「中国への追加関税再導入」発言を受けて大幅下落。S&P500は前週比−2.4%、ナスダック−2.5%、ダウ−2.7%と全面安となりました。半導体やハイテクを中心に売りが広がり、エヌビディアやアップルが軟調。貿易摩擦再燃への懸念に加え、FRBの利下げ時期が後ずれするとの観測がリスク回避姿勢を強めました。投資家は決算シーズン入りを前にポジション整理を進め、全体としてリスクオフムードが支配的な1週間となりました。
為替市場
始値:150.37 円(10/6)
高値:153.27 円(10/10)
安値:149.05 円(10/6)
終値:151.16 円(10/10)
この週のドル円相場は、前半と後半で明暗が分かれる展開となりました。週初は149.19円で始まり、高市早苗氏の自民党総裁選勝利を受けた“高市トレード”が波及。市場は「積極財政と金融緩和継続」による日本経済の底上げを期待し、日経平均の急騰とともに円売りが進行しました。これにより、ドル円は一時153.27円まで上昇し、年初来高値を更新。
しかし週後半、トランプ大統領が中国製品への追加関税を表明したことで世界的にリスク回避ムードが急速に強まり、株価は急落。投資家は安全資産としての円を買い戻し、ドル円は151円台前半まで反落しました。最終的に終値は151.15円。
自公連立解消後の「5シナリオ」
① 日本維新の会・国民民主党との連立(中道・保守再編型)
最も現実味があるのは、日本維新の会や国民民主党といった中道保守勢力との連立です。
維新は経済構造改革や憲法改正、国防強化などで自民党と政策面の共通項が多く、国民民主も財政政策やエネルギー政策、防衛費拡充の方向性では歩調を合わせやすい。
特に、高市政権が掲げる「積極財政×規制緩和」路線とは親和性が高く、“高市政権の現実的なパートナー候補”として最有力といえます。
しかし、この連立には明確な選挙区調整の壁があります。
維新は大阪や近畿圏を中心に、自民党と直接競合しており、両者が同一選挙区で候補を立て合う構図が長年続いてきました。
仮に連立を組むとなれば、次期衆院選での候補者調整が不可避となり、「どちらの候補を立てるか」や「比例名簿の配分」などで摩擦が必至です。
特に大阪では、維新が地域政党としての主導権を譲らない姿勢を崩しておらず、地方組織間の対立も深い。
国民民主に関しても、玉木代表が「是々非々」を掲げており、閣外協力にとどまる可能性が高い。
また、維新・国民ともに自民党より若年層の支持が多く、選挙協力がかえって自民の高齢支持層との軋轢を生むリスクもある。
したがって、この中道連立は政策的には親和性が高いものの、選挙区調整と勢力均衡の問題で政治的コストが非常に大きい。
政権の安定よりも“政党再編”に近い動きとなる可能性があり、短期的には難航が予想されます。
② 立憲民主党との大連立(政策安定・国難対応型)
政局が不安定化した場合、自民×立憲民主党による「大連立」の可能性も議論されます。
財政や防衛など国の根幹政策で協調し、超党派的な安定政権を目指す構図です。
過去にも東日本大震災や新型コロナのような国難期に、党派を超えた協力体制が模索された経緯があり、政局混乱の回避策として浮上する可能性があります。
ハードルは非常に高く、理念・支持層・政策すべてで溝が深い点。特に立憲は「護憲」「反アベノミクス」など、保守主導の高市政権とは真逆の立場にあり、支持基盤の反発も必至です。
一時的な“危機対応内閣”としては成立しても、長期安定政権にはなりにくいでしょう。
③ 少数与党+法案ごとの協力(流動的運営型)
連立を組まずに、自民単独で政権を維持しつつ、法案ごとに他党と協力する方式です。
これは「実質的な少数与党」体制で、毎回の国会審議で与野党の合意形成を図りながら法案を通す運営です。
安倍・菅政権時代のような強力な多数支配とは異なり、政策ごとに柔軟な連携を行うことで政局リスクを抑える狙いがあります。
ハードルは、議席数が足りない場合に「予算や重要法案が通らない」こと。
また、毎回の交渉コストが増し、政策実行のスピードが低下します。短期的な“つなぎ政権”には適しますが、安定性に欠けるのが最大の難点です。
④ 公明党との関係修復・再連立(実務安定型)
最も“現状回帰”のシナリオが、自公の再連立です。
選挙協力や地方組織でのつながりが強く、選挙戦術の面では依然として最も安定した組み合わせです。
財務・防衛・外交などで意見の違いはあるものの、互いに「政権安定」という利益を共有しており、時間をかけて再接近する可能性は残されています。
ハードルは、今回の連立解消の根底にある「政治資金規制法」や「学会票依存構造」への不信感。
高市政権が「政治改革」を旗印に掲げる限り、公明との再接近は世論の反発を招きやすく、条件付きの限定的連立(政策合意ベース)にとどまる可能性が高いです。
⑤ 参政党・保守新党との新連立(イデオロギー純化型)
もう一つのシナリオが、参政党や保守系新党との新連立構想です。
草の根保守層やネット世論で一定の支持を持つ政党との協調により、「純粋保守連立」を形成する動き。
高市政権の理念型政治(自主憲法・教育改革・防衛力強化)と親和性が高く、政策メッセージの一貫性を打ち出せる利点があります。
ハードルは、議席数の少なさと政策実行力の欠如。現実的な議会運営には遠く、政権安定には寄与しにくい構図です。象徴的な政治提携にとどまる可能性が高いでしょう。
⑥ 完全単独政権(無連立・マイノリティ運営型)
最後に考えられるのが、自民党単独による政権維持です。
議席が相対多数であれば、他党との正式な連立を組まずに政権を運営することは可能。
首相指名では高市氏が引き続き選ばれる公算が高いものの、国会運営は法案ごとの協議に依存するため、非常に不安定な政権運営となります。
ハードルは、補正予算や防衛関連法案など大型政策の成立が困難になる点。
また、参院での多数確保が難しく、ねじれ国会化すれば政権運営は一気に行き詰まります。
このため、単独体制は“短命内閣”となるリスクが最も高いシナリオです。
高市トレードの巻き戻しがあっても、日本株の上昇トレンドは続く
10月の「高市トレード」で日本株は一時的に急騰しましたが、実際にはその前からすでに上昇トレンドが形成されていました。円安の進行や企業収益の改善、そして構造改革への期待が相場を押し上げていたためです。特に、輸出企業の採算改善による製造業や半導体株の上昇、設備投資や公共事業拡大への思惑、コーポレートガバナンス改革による資本効率の改善などが土台となっていました。つまり、高市トレードはもともと強かった上昇基調を一段と加速させた“きっかけ”に過ぎません。
そして、長期的に見れば自公連立の解消は日本にとってむしろプラスに働く可能性があります。
長年続いた固定的な政権構造が見直され、維新や国民民主などとの新たな連携が進めば、政策の多様性と競争が生まれます。これにより、成長戦略や規制改革がより現実的に進み、政治が再び「日本を成長させる方向」に動く可能性が高まります。安定を最優先にしてきた従来の政治文化から、改革を実行する政治への転換が期待できるのです。
つまり、高市トレードの巻き戻しは一時的な調整に過ぎず、日本株の上昇トレンドは高市政権以前から続く構造的な強さに支えられていると言えます。為替、企業業績、政策の三つの柱が維持される限り、日本株の上昇基調は今後も続く可能性が高いでしょう。

コメント