2025.5.27(ドル円144円台を回復)5月消費者信頼感指数が予想を上回り、センチメントの改善で株式市場は上昇

Market

東京時間

ドル円は、植田和男総裁の発言内容(下記詳細)が以前と変わりがなかったことから、ドル売り、円買いが進み、142円11銭と約1カ月ぶり安値水準まで下落。
しかし、午後に入ると「財務省による国債発行計画見直し」(下記詳細)の報道を受けて日本の金利が低下し、ドル円はドル買い、円売りに切り返すと143円後半へと上昇。
欧州時間入り後も上昇を続けて144円台を回復した。

日本10年債利回り:1.467% −0.037−2.46%
日本20年債利回り:2.347% −0.157−6.27%
日本30年債利回り:2.849% −0.199−6.53%

株式市場では、日経平均は、前営業日比192円58銭高の3万7724円11銭と3日続伸して取引を終えた。
朝方はドル円の下落を睨みながら上値の思い展開が続いたが、国内金利の低下を受けてドル円が上昇すると、日本株も反発した。

海外時間

米株は大幅反発。
貿易交渉の進展期待や5月消費者信頼感指数が予想を上回る強い結果となったことでセンチメントが改善。

5月の米国消費者信頼感指数は4年ぶりの大幅上昇となった。
前月は5年ぶりの水準に落ち込んでいたが、関税の一時停止を背景に、景気や労働市場の見通しが改善した。

また、トランプ米大統領は先週金曜日にEUに対して50%の関税を6月1日から課すとしたが、フォンデアライエン欧州委員長の要請を受けて日曜日に関税発動を7月9日まで延期すると発表したほか、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長がCNBCの番組で、関税に関するいくつかのディールが今週中にあるだろうと発言。

業種別ではS&P500の全11セクターが上昇。
一般消費財が3.04%高と上昇率トップとなったほか、IT、コミュニケーションが2%超上昇した。
投資家の不安心理を示すVIX指数は先週末の22.29ポイントから18.96ポイントに低下した。

SP500 5,921.53USD +118.70 +2.05%
NYダウ 42,343.65USD +740.58 +1.78%
ナスダック 19,199.16USD +461.96 +2.47%

為替市場では、ドルが主要通貨に対して上昇。
米国の消費者信頼感指数の改善を受けて、ドル買いが進んだ。
ドル円も、アジア時間に「財務省による国債発行調整」の報道をうけて、円金利が低下したことで円売りが進んだ流れを引き継いで、144円台を回復した。

米国5月消費者信頼感指数

米民間調査機関コンファレンスボードが発表する経済指標。
5000世帯を対象に、景気や雇用情勢などについて消費者に調査した結果であり、消費者の視点から米国経済の状況を確認できる。
同指標はミシガン大学消費者信頼感指数とともに、経済活動全体に重要な役割を果たす個人消費に関する重要指標となっている。

総合指数:98.0(前月比 +12.3ポイント)
現況指数:135.9(前月比 +4.8ポイント)
期待指数:72.8(前月比 +17.4ポイント)

植田総裁発言

日本銀行金融研究所主催2025年国際コンファランス

総裁は、基調的な物価上昇率が2027年度までの見通し期間の後半に「2%に徐々に収束していくと見込んでいる」と指摘。見通しが実現していくとすれば、物価2%の持続的達成へ「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と語った。中心的な見通しを巡るリスクは上下両方向に大きいとも述べた。

総裁は、政策判断で重視する基調的な物価上昇率が2%を下回る一方、生活に身近な食料品やエネルギーを含む消費者物価の総合指数が3年以上にわたり2%を上回っていることによるコミュニケーションの難しさに言及。両者の大きなかい離の長期化は特に問題だとの認識を示すとともに、「食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要がある」と語った。

  基調的物価を評価する上で重要な予想物価上昇率は1.5%から2%の間にあると分析。これまでの金融緩和によって、「予想物価上昇率をゼロから引き上げることには成功したが、2%にアンカーされているという状況にはまだ至っていない」とし、現在も緩和的な政策スタンスを維持し続けていると説明した。

参照:Bloomberg


植田総裁の発言内容は、概ね前回の日銀会合後の発言に沿った内容で、基調インフレの動向を注視しながら、利上げの旗は下ろさないスタンスでした。
足元の、金利上昇(国債売り)を抑制するために、植田総裁にハト派な姿勢を期待する向きや、テーパリングに関する方向性の転換を期待するマーケット参加者も一部にいたことから、為替では円買いが進行した格好です。

25年度市中年限債の発行再検討へ、超長期債減額も視野=関係筋

 超長期債利回りの歴史的上昇を受け、財務省が2025年度国債発行計画の年限構成を近く再検討することが27日、分かった。複数の関係筋が明らかにした。投資家の需要減衰が想定以上なら超長期債の減額も視野に入れる。

6月中下旬にも市場参加者と協議し、対応策を詰める。

協議では、現行計画を策定した24年12月以降、顕著な金利上昇がみられた超長期債を含む各年限の需給状況を点検。投資家の需要動向の構造的な変化を踏まえ、再検討が必要と判断されれば、当初計画の年限構成を見直す。

超長期債にあたる40年、30年、20年のいずれかを減額する場合、短期も含め、他の年限の発行額を増やす可能性が高い。全体の市中向けカレンダー発行額(172.3兆円)を変更することは想定していない。

当初計画では、市場参加者の意向を反映し、新年度入札分から最長年限となる40年債と30年債をいずれも減額。40年債は2007年11月の導入来、最大の減額幅としていた。

参照:ロイター


先週から、加速していた日本金利の上昇は、生命保険会社をはじめとする「日本債券ホルダー」が買い入れを抑制した、あるいは含み損を抱えた日本国債を大量に売却したことが要因とされています。
なぜ、このタイミングで大きく売りに出たかは諸説ありますが、国債の需要が緩んでいる(国債を欲しい人が減っている)状況であることは間違いありません。
そんな状況下で、さらに大量の国債を発行をして供給を増やしたら、国債が売られて金利が上昇する恐れがあります。
そのため、財務省は生命保険会社をはじめとする市場参加者に「どのくらいの年限の国債であれば需要がありますか?」とヒアリングをかけて、できるだけ需要と供給がマッチする年限の国債発行をしようと計画しているということですね。

日銀が国債買い入れを減らしている中で、財務省が発行数を調整することで金利上昇をコントロールしようという発想です。

今回、「関係者筋」として報道しているのは「観測気球」といって、マーケットがどのように反応するかを様子見するためです。
おそらく、財務省の期待通り金利低下で反応してくれたので、マーケットの沈静化を狙い、「国債の発行年限調整」は行われる運びでしょう。

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