年初から米国株は下落を続けており、NISA年初一括投資を行なった方は辛い時間帯ではないでしょうか?
しかし、安心してください。年初からの株価下落は長期上昇相場における必要な調整局面だからです。
要因を整理して今後の復調を待ちましょう。
🔳SP500チャート
2024年に米株が上昇した要因と、足もとの急落要因を整理しながら今後の展望を予想していきます。
まず、2024年は堅調な企業決算や生成AIをはじめとするハイテク産業の急進により、米国経済が拡大し米国株は上昇を続けました。
また、トランプ前大統領が大統領に返り咲いたことで、景気刺激策への期待が一気に高まり年央から年末にかけてはトランプラリーも相まって一年を通して上昇する結果となりました。
しかし、年初から米国経済の先行きに陰りが見え始め、トランプ大統領の関税政策の不透明感や、ウクライナとロシアの停戦協議の難航といった悪材料が相次いだことで、昨年まで絶好調だった米国株が一気に調整局面へと陥った格好となります。
【2024年の株価上昇要因】
1. 経済の成長
2024年の米国経済は消費者支出、企業投資が堅調に推移したことが影響し成長率を伸ばし、GDPは前年比で2.8%の伸びとなり、株価の上昇に繋がりました。その他、雇用環境も良好で、失業率が4.0%と低水準を維持したことも消費者信頼感や支出が増えた要因といえます。
2.技術革新と新産業の成長と好調な企業業績
言わずもがな、AIや再生可能エネルギーなどの成長産業、特に人工知能(AI)や再生可能エネルギーなどの新興技術に大きな注目が集まり、これらの分野に関連する株が大きく上昇しました。また、AIの進展が企業の効率化を促進し、長期的な成長への期待が高まったともいえます。
それに付随して米国の大手企業が好調な決算を発表し、特にテクノロジー、消費財、ヘルスケアなどのセクターが高い成長を示しました。
3. FRBによる利下げ
2024年にインフレが落ち着きを見せる中、製造業指数や、非製造業指数の低迷を背景にFRBが適切なタイミングで利下に踏み切るなど、金利を安定的に保つことで、投資家が株式市場に資金を投じやすい環境を整えてきました。更には、今後もFRBが継続的に利下げを行うとの折り込みが強まったこともリスク資産への投資を加速させた大きな要因です。
4. 政府の支援策
バイデン政権下では、インフラ整備や半導体産業への投資、クリーンエネルギー投資、中間所得層の住宅購入支援等、大規模な景気刺激策を投じ16万人以上の雇用が創出され、労働者の賃金も上昇しました。更に、年後半には米国大統領選において、トランプ前大統領が勝利し2025年から大統領に返り咲くことが決まり、2016年を彷彿とさせる景気刺激策(大型減税、規制緩和、インフラ投資)への期待が株価をもう一段押し上げました。
5. 株式市場の楽観的ムード
上記の要因に加えて、ウクライナ戦争が長期化したことで地政学リスクへの注目度が低下し株式市場に楽観的なムードが広がり、投資家がリスクを取って株式に投資する動きが強まりました。
【年初からの下落要因】
1.米国のインフレ再燃と経済の減速懸念
2024年はインフレが徐々に落ち着きを見せ始め、FRBによる利下げが実施されるなど、米株市場においては良好な環境が続きました。
しかし、2025年に入りインフレが再び上昇し始めたことでFRBが利下げペースを遅らせるとの観測が強まりました。
更に、トランプ新政権による貿易相手国への関税の影響がインフレを加速させるとの思惑が株式市場に大きくのしかかっています。
2.予測不能なトランプ大統領
トランプ大統領は就任後、矢継ぎ早に各国への関税政策を打ち出しており、既に中国、メキシコ、カナダに関税を課しております。
今後も幅広い貿易相手国に関税を課すことが予想されます。
その他、ウクライナとの鉱物資源協定の合意協議が決裂したことで、西側諸国との分裂が浮き彫りとなる等、世界の枠組みからの孤立が目立ちます。
これら、トランプ大統領の大立ち回りが投資家心理を悪化させております。
3.ハイテク分野、テック分野の株の下落
S&P500指数におけるテクノロジー関連企業の割合は40%〜50%とも言われており、昨年までS&P500指数の上昇に大きく貢献してきました。
しかし、中国のDeepSeakの台頭による米国AI産業のバリュー低下や、それに付随する半導体関連株、ハイテク関連株が昨年まで大きく上昇した分の調整局面に入っています。
4.欧州株指数の上昇
ドイツ政府がインフラや防衛費に約1兆ドル規模の支出を決め、欧州中央銀行が政策金利を引き下げるなど、経済刺激作が次々と打ち出されており、欧州の経済成長が加速するとの思惑から、欧州株指数に買いが入っております。
機関投資家をはじめ、世界の投資マネーが米国から欧州へとシフトしていることも米株の下落に繋がっていると思われます。
このように昨年の上昇と年初からの下落要因をまとめてみると、1.2.3は2024年の株価上昇要因が調整した結果であることがわかります。
しかし、株価が上昇するためには調整は必要であり、年初からの株価の下落は長期的な上昇相場における調整局面と見ております。
年初からさまざまなマーケットレポートには、「トランプ関税政策の不透明感」というフレーズが踊っております。
トランプ政権の関税政策が先行きの景気減速やインフレ懸念を引き起こしていることは確かですが、今後想定されるトランプ大統領の政策をまとめてみると米経済に対してネガティブなものばかりではないことが分かります。
1. 貿易政策
トランプは依然として各国に対して強硬な貿易政策を維持する可能性が高いです。しかし、それらの関税政策の背景は貿易協定の見直しや、新たな協定の交渉といった自国経済に有利な政策を進める為です。また、関税政策により自国での生産加速が進めば自国ファーストの政策の実現に繋がっていくことになります。目先の関税政策の不透明感は短期的には株価下押し材料となりますが、長期的には経済底上げにつながると見ておりますので、足元のマーケットの悲観ムードは行き過ぎていると考えております。
2.エネルギー政策
トランプ大統領は石油やガス産業を重視し、エネルギー独立を掲げております。就任後も「掘って掘って掘りまくれ」とエネルギー業界を鼓舞する演説をしており、化石燃料産業の支援を続けるとともに、再生可能エネルギーへの投資も促進することが考えられます。これらのエネルギー政策は、エネルギー供給を安定させ、エネルギー価格の急騰を防ぐことによってインフレ抑制に寄与する可能性が高いといえます。特に国内でのエネルギー生産拡大や規制緩和が実施されることで、エネルギー価格の安定が期待され、物価上昇を抑制する効果があり、足もと懸念されているインフレへの懸念にも対応する内容です。
3.FRBの金融引き締めムードの後退
トランプ大統領は度々FRBに対して利下げ(金融緩和)を要請するような発言をしております。
もちろん、FRBは独立した機関であるため独自の方針を貫く必要がありますが、米景気が足元落ち込む中でインフレが落ち着きを見せれば利下げを行わない理由もないため、年初からの金融引き締め的なムードは後退することが予想されます。
4. 減税政策
トランプ政権下では今後、法人税率を引き下げや、個人所得税の減税を進める可能性があります。また、貯蓄や投資を促進するための減税策や、資産を国外から国内に戻すための優遇措置を継続することも考えられます。
5. インフラ投資の拡大
前回政権時同様に、インフラ投資計画を引き続き推進する可能性が高いです。この投資は道路、橋、鉄道、空港などの整備に向けられ、雇用を創出し、経済成長を促進することを目的としていると予測されます。民間資金を巻き込む形での投資が進められると予想されます。
6. 規制緩和と企業支援
ビジネスの負担を減らすための規制緩和をさらに進める可能性があります。
特に環境規制や金融規制の緩和、医療・製薬業界の規制緩和を強化し、企業活動の自由度を高めることが予想されます。
このように、トランプ大統領の政策には景気刺激策が豊富に含まれております。
しかし、就任早々に着手した関税政策のみに注目が集まり、短期投資家による売り圧力も相まって調整が強まっていると想定されます。
トランプ大統領は来年にも中間選挙を控えていることから、おそらく景気下押しの可能性がある関税政策を早々に進めて、その後景気刺激策に取り組んでいくと思われます。
そもそも、昨年の年央から年末にかけての上昇はトランプ政権への期待によるトランプラリーであったことを鑑みれば、政策が実現していく過程で株価が昨年高値を超えて上昇していくことは何ら不自然ではありません。年初からの下落局面はそのための地ならしであると言えます。
調整目処としては、2024年の上昇が開始する前の2023年末安値と直近市場最高値を結んだフィボナッチ分析38.2%戻し付近から50%付近である、5200から5400までを予想しております。
🔳SP500チャート
今後も不透明な時間が続くと思われますので上下の動きに振らされる展開にはなりますが、定期買い付けで無理のないペースで積立買い付けをすることをお勧めします。年初からNISA一括積み立て投資を実施した方は、今は辛い時間帯ですが要因を整理して耐える時間です。
やってはいけない行動は、①定期積立を一時中断する、②年初一括で投資したNISA枠を売却する、③短期下落を狙って空売りをする、です。
長期的な目線で相場を俯瞰し、下がる時も上がる時も着実に積立を継続して下さい。
その為に、焦らず今の状況を分析し今後に備えましょう。
引き続き、マーケット環境を注視しながらアップデートしていきたいと思います。