市場概況(1週間振振り返り)
日本市場
日経平均株価:53,322.85円(前週末比 ▲0.96%)
TOPIX:3,566.32(前週末比 ▲1.74%)
日本10年国債利回り:2.257%(前週末比 +0.34%)
先週の日本市場は、日米当局による共同の為替レートチェックを受け、為替が円高方向に急伸したことで、日本株も下落する場面から始まりました。市場では実弾介入への警戒感が強まり、投資家心理が一時的に悪化しました。
しかし、その後、実際の為替介入は行われなかったことが判明し、円高の進行はいったん落ち着きを取り戻しました。為替市場で過度な警戒感が後退したことを受け、株式市場でも下落の流れは次第に一服しました。
さらに、衆議院選挙を巡り、与党が優勢との世論調査結果が伝わったことも相場の支えとなりました。政局不安が和らいだことで、株価は下値を固め、その後は底堅く推移しました。
こうした動きを受け、市場では短期的な調整局面をおおむね終えたとの見方が広がっています。業種別では、半導体関連を中心としたハイテク株の上昇が相場全体を支え、指数の下支え役となりました。
もっとも、市場では積極的な財政出動による財政悪化への懸念から、日本国債金利が上昇しているとの見方が大勢となっています。政府支出の拡大が続けば、国債増発による需給悪化や将来的な財政負担を意識する動きが強まりやすいためです。
ただし、日本政府の財政破綻の可能性は極めて低いと考えられています。日本は自国通貨建てで国債を発行しており、海外依存度も低いことから、短期的な信用不安が顕在化する状況にはありません。
このため、足元の長期金利上昇は、財政不安の表れというよりも、インフレを背景とした経済正常化の一環と受け止める向きが多くなっています。物価上昇とともに金利が緩やかに上昇する局面は、デフレ下で抑え込まれてきた金利環境からの転換を示すものであり、必ずしもネガティブな動きとは言えません。
米国市場
S&P500:6,939.03(前週末比 +0.34%)
NYダウ(Dow Jones):48,892.47(前週末比 ▲0.42%)
ナスダック総合:23,461.82(前週末比 ▲0.17%)
米国10年国債利回り:4.25%前後(前週末比 +2.64% 程度上昇)
先週の米国市場は、FOMCの内容を消化しつつ、金利動向を巡って神経質な展開となりました。株価指数は方向感に乏しく、S&P500は小幅高となった一方、NYダウやナスダック総合は伸び悩みました。
FOMCでは政策金利の据え置きが決定されましたが、声明およびパウエル議長の会見では、早期利下げに対する慎重姿勢が改めて示されました。インフレ鈍化を一定程度評価しながらも、「利下げを判断するにはなお時間が必要」との認識が強調され、市場で先行していた利下げ期待はやや後退しました。
こうした中、米国長期金利は4.2%台まで上昇しましたが、その背景には米国内要因だけでなく、日本の長期金利上昇の影響もあったとみられます。日本では積極的な財政出動やインフレを背景に国債利回りが上昇しており、日米金利差の縮小を意識したグローバル債券市場での調整が、米国金利にも波及した形です。
特に、世界的に低金利のアンカーとされてきた日本の金利が動き始めたことで、国際的な資金配分の見直しが進み、米国債にも一時的な売り圧力がかかりました。この点は、今回の米金利上昇を理解する上で重要な要素となっています。
株式市場では、金利上昇を受けてハイテク株の一部に調整が入ったものの、景気の底堅さや企業業績への期待から下値は限定的でした。指数全体としては、調整を挟みながらも高値圏を維持する展開となっています。
総じて先週の米国市場は、FOMCによる金融政策の方向性と、日米を含むグローバル金利動向が交錯する一週間となりました。今後は米国内指標だけでなく、日本の金利動向が米国市場にも影響を及ぼす局面が続く可能性があり、グローバルな視点での金利分析が一段と重要になりそうです。
為替市場(ドル円)
始値: 約 154.63円
高値: 約155.34円
安値: 約152.09円
終値: 約154.75円
先週の為替市場は、日米当局による同時の為替レートチェックをきっかけに、円高が急速に進む場面から始まりました。市場では実弾介入への警戒感が一気に高まり、ドル円は一時152円台前半まで円高方向に振れる展開となりました。
もっとも、その後、実際の為替介入は行われなかったことが明らかとなり、円高の進行はいったん一服しました。過度な警戒感が後退したことで、為替市場は落ち着きを取り戻し、ドル円は週後半にかけて方向感を欠く推移となりました。
今回の動きを通じて、市場では160円水準が改めて強い警戒ラインとして意識されるようになっています。日米当局が足並みをそろえて為替市場への監視姿勢を示したことで、160円台では当局対応が強まるとの見方が一段と広がりました。
一方で、介入が否定されたことから、円安トレンドそのものが転換したとの見方は限定的です。金利差構造に大きな変化はなく、円高は一時的な調整の域にとどまったとの受け止めが市場では優勢となっています。
このため為替市場は、160円を明確に上抜ける動きには強い警戒が残る一方、下方向でも積極的に円高を追いにくい状況となっており、当面は当局の出方をにらみながら神経質な値動きが続くとみられます。
金銀価格暴落
先週は、金価格や銀価格が大幅に暴落しました。短期間で急上昇していた貴金属市場に、急ブレーキがかかる形となっています。市場では一時、リスク回避的な売りが連鎖し、価格調整の動きが一気に強まりました。
今回の下落のきっかけとなったのは、次期FRB議長にケビン・ウォーシュ氏が就任するとの見方が広がったことです。ウォーシュ氏はこれまで金融引き締めに前向きな、いわゆるタカ派の人物として知られており、市場では「インフレ抑制を重視する姿勢が強まるのではないか」との警戒感が急速に広がりました。
とりわけ足元では、インフレ懸念や地政学リスクを背景に金価格・銀価格が急ピッチで上昇していました。投機的な資金も多く流入していたため、FRB人事という材料をきっかけに、利益確定売りが一斉に出やすい状況にあったと言えます。その結果、価格は短期間で大幅な調整局面に入りました。
ただし、今回の下落をもって金融政策環境が大きく転換したと判断するのは適切ではありません。ウォーシュ氏は近年、過度な金融引き締めには慎重な姿勢を示しており、従来の強硬なタカ派イメージからは変化が見られます。足元の発言や論調を踏まえると、市場を冷え込ませるような急激な引き締めが行われる可能性は高くないと考えられます。
そのため今回の急落は、政策スタンスそのものへの本質的な懸念というよりも、過度に上昇していた価格水準を調整するための「きっかけ」として材料視された側面が大きいとみられます。トレンド転換というより、上昇局面の中で生じた一時的な調整と位置づけるのが妥当でしょう。
また、インフレを取り巻く環境自体に大きな変化はありません。各国の財政拡張姿勢は続いており、地政学リスクや供給制約といった構造的な要因も解消されていません。実質金利が大きく上昇しにくい状況が続く中で、インフレヘッジとしてのコモディティへの投資意欲が急速に後退するとは考えにくい状況です。
このため、金や銀をはじめとしたコモディティ市場は、短期的には不安定な値動きが続く可能性があるものの、過熱感が一服した後は、再び上昇基調を模索する展開が想定されます。今回の下落は悲観すべき材料ではなく、中長期トレンドの中での健全な調整局面と捉えることができるでしょう。
総じて、今回の暴落は市場心理の急変による一時的な反応に過ぎず、インフレ環境が続く限り、コモディティ価格への中長期的な投資意欲は維持される見通しです。今後は過度な値動きに振り回されるのではなく、冷静に相場の本質を見極める局面に入ったと言えます。

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